特集 農業×IT~活用の実態を知る!~

<コラム>
岩谷牧場 (北海道幕別町)

 今号の特集ではIT技術を活用した農業法人2社にお話を伺いました。
一方、そうした技術があることを知りながら、あえて取り入れていない方もいらっしゃいます。その想いとは?今回は、岩谷牧場 岩谷さんご夫婦にお話を伺いました。

△智恵さん(左)と史人さん(右)


理想の酪農を求めて

―近年、農業現場にIT技術を取り入れる動きが盛り上がっていますが、どのように思われますか?

史人さん
 うちの牧場は全部で60頭ほど。作業は夫婦で分担しており、私は親牛担当で日々の搾乳や人工授精などを、妻は子牛を担当しています。この規模だと牛の顔も1頭1頭分かりますし、牛の状態も見れば把握できるので、高度な管理ソフトを導入しなくてもやっていける規模なんですよね。
 ただ、全てのデータが私の頭の中にあるので、私が倒れてしまうと大変なことになるというリスクはありますが…。そのため、本当は誰が見てもこの牧場を動かせる状態を作っておくことが大事なんですが、費用対効果を考えると、今はまだ必要ないかなと思っています。

―従業員の方はいらっしゃいますか?

史人さん
 正規雇用はいませんが、酪農ヘルパーさんにお願いしたり、大学生がバイトや実習でよく来ます。特に学生さんには実際の作業をたくさん体験してほしいですね。ITは便利ですが操作をするのは人なので、そもそも操作をする人が牛を見る目を養っていないと上手くいかないと思うので。

智恵さん
 小さな酪農家で体験するからこそ学べること・教えられることが沢山あると思います。除角やワクチネーションなども一緒にすることがありますが、「普通のバイトだと経験できないので勉強になった」と話す学生さんもいますよ。学生さんの将来の夢を聞くのも面白くて楽しみの一つです。

史人さん
 私自身、小さい頃から「北海道で酪農したい!」と思い、夢が叶って新規就農できました。その時から、この規模、このやり方の酪農が理想的でした。

―岩谷さんは新規就農者なのですか?

史人さん
 そうです。妻も私も出身は本州です。妻とは大学時代の同級生で、妻も将来は北海道に住み動物の仕事をすることに憧れていました。その後いろいろご縁をいただき、平成11年からこの場所で牧場を始めました。就農の際は「公社営農場リース事業」を活用しましたが、やはり資金面は大変でしたね。その事業は牛も施設も土地も全部含めて貸すというもので、総額1億円になりました。5年据え置きで返済していくのですが、牛と施設は減価償却が終わっているので、返済自体は6千万円くらいです。ただ、今の時代に同じ規模で新規就農しようと思うと、もっとかかると思います。
 あと、就農当時はトラクターもなくて実習先の方にお借りしていたのですが、牧草収穫が遅いのを見かねた近所の方々が手伝いに来てくれるなど、すごく助けていただきました。地域の方々にも本当に感謝しています。

―最後に、学生に一言お願いします!

智恵さん
 多くの学生さんは牛を扱うことに慣れていないので、牛は逃げるし、十分気を付けないとケガをする恐れもあります。でもそうしたことは、理屈ではなく経験を積んで覚えていくことなので、どんどん経験してほしいですね。

史人さん
 農業はやりがいのある仕事!それに、これからの地域や農業を作るのは「よそ者・バカ者・愚か者」だと思う。だからこそ、学生の間は色々なところで実習をして農業の価値を体感して、将来は農業を仕事にしてほしいですね。

 




取材を通して

 今回は農業現場でのIT活用の実態を知るべく、クラウドサービスを導入されている農業法人2社にお話を伺いました。

 鍋八農産さんの取材では、作業管理や報告書作成の自動化などで劇的な効率改善がなされていました。そこまでできたのはIT導入に本気で取り組み、話し合いを重ねて、常に「カイゼン」し続けてきた皆さんの姿勢によるところが大きいのだろうと感じました。
 竹下牧場さんの取材では、今まで感覚に頼っていたものが数値化され便利になった一方で、ITを使いこなすためには人が変わらず重要なのだということがわかりました。
 また酪農の在り方は、経営主によって頭数も規模も飼い方も違ってきますが、牛たちは従業員であり、家計の一部であり、「牛に食べさせてもらっている、牛で生きている」という感覚は、どの酪農家さんにも共通していました。

 取材を通じて、その想いや意識など「職人」の中身に触れることができました。いろんな業種でITの活用が広まっていく中、根本である人の中身こそが重要になっていきます。だからこそ、チャレンジ精神や、創造力のある人間が、今後の農業界を盛り上げていくのに必要だと感じました。取材にご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。

(特集メンバー 一同)


※記載情報は取材当時のものです。
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